研究内容

白色腐朽菌を用いたバイオリファイナリー・バイオレメディエーションに関する研究(平井・森・小野)

 白色腐朽菌は、木材の主要成分であり難分解性芳香族高分子であるリグニンを高度に分解出来る唯一の微生物であることから、(1) 本能力を用いた木質バイオリファイナリーへの応用、(2) 本能力(異物代謝能)を利用した難分解性環境汚染物質の分解・無毒化、といった応用研究も展開している。


(1) 白色腐朽菌を用いた木質バイオリファイナリーに関する研究

 地球温暖化による気候変動・異常気象は地球における重要な問題であり、『カーボンニュートラル』、つまり脱炭素社会の実現は、地球に突きつけられた喫緊の課題である。

 当研究室では、再生可能なバイオマスである木材を原料に、バイオ燃料やプラスチック原料を生産する木質バイオリファイナリーに関する研究を展開している。本研究では、高活性リグニン分解菌Phanerochaete sordida YK-624株の「高いリグニン分解能」を利用し、木材中のセルロースを原料として、次世代燃料のエタノール・水素、プラスチック原料の乳酸・酢酸、人工甘味料のキシリトールを産生可能な株の発見、さらには分子育種に成功している(図1)。現在も白色腐朽菌を用いた木質バイオリファイナリーに関する研究を展開しており、脱炭素社会実現可能な菌の作出を進めている。



(2) 白色腐朽菌を用いたバイオレメディエーションに関する研究

 様々な汚染環境を、生物機能(微生物や植物)を用いて修復する技術を「バイオレメディエーション」といい、世界各国で研究が進められ、一部の技術は利用されている。白色腐朽菌は難分解性であるリグニンを分解可能であることから、難分解性環境汚染物質の分解に応用できないかという研究が世界各国で進められている。当研究室では、白色腐朽菌や白色腐朽菌が産生するリグニン分解酵素を用いて、難分解性環境汚染物質の分解・無毒化に関する研究を展開している。これまでに、(i) マンガンペルキシダーゼ(MnP)によるカビ毒アフラトキシンB1(AFB)の分解・低毒化(図2)、(ii) リグニンペルオキシダーゼによる環境ホルモン類の分解・無毒化、(iii) P. sordida YK-624株による環境ホルモン ビスフェノールA(BPA)の分解・無毒化(図3)、(iv) カワラタケによるジウロンの分解、(v) P. sordida YK-624株によるネオニコチノイド系殺虫剤(ミツバチの大量失踪・大量死の原因物質)の分解・無毒化(図4)、を報告している。特に(iii)及び(v)において、分解の初発の反応にシトクロムP450が関与していることを世界で初めて見いだした。現在も研究は展開しており、白色腐朽菌の可能性(社会実装も含む)について検討を進めている。